大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和44年(オ)1110号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告人らの上告理由第一点一、二(一)ないし(二)について。

所論の点に関する原審の認定・判断は挙示の証拠関係に照らして正当としてこれを肯認することができ、その判断の過程に所論のような違法はない。それゆえ、論旨は理由がない。

同二(四)について。

原審は、所論のような理由によつて、本件売買契約が履行不能となつた旨判断するものではない。所論は、原判決を正解しないものであつて理由がない。

同第二点について。

原審の確定するところによれば、本件契約は、本件山林中の立・倒木および本件諸施設の売買であるが、その目的とするところは、右立・倒木の伐採、搬出にあり、右目的達成のため、売主たる上告会社は、買主たる被上告人に対し、本件山林の所有者より被上告人が右伐採、搬出のため本件山林を使用することの承諾を得ることを約したというのである。それゆえ、上告会社は、被上告人に対し右の承諾を得させる債務を有するものであり、右債務は本件契約の目的達成のため必要不可欠な債務と解すべきである。そして、原審の確定するところによれば、本件山林につき管理権限を有する舟桑山管理委員会は、上告会社よりなされた伐採期限の延長許可申請を昭和四〇年五月二七日付をもつて拒絶し、さらに、同月三一日付をもつて被上告人側に対し、本件山林への立入禁止を通告したというのであるから、右債務は上告会社の責に帰すべき事由により履行不能となつたものと解すべきである。したがつて、被上告人は、これを理由に、本件売買契約を全部解除できるものといわなければならない。これと同旨の原審の判断は正当であり、論旨は理由がない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 関根小郷 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例